三種町西又 サムネ

廃村 三種町西又 ~過疎農道 潮時の輝き~

廃村 三種町西又 (にしまた)

三種町西又 電柱
地名を示すサインは、もはや電柱くらいか。

About 廃村 三種町西又

秋田県三種町上岩川字西又沢にある廃村。1972年無人(集落再編成事業)。最盛期12戸とされるが、現在は小屋などを数えても4戸ほどの住居跡しか確認できない。道のりはやや遠く、隣の廃村 茨島と共に三種行き止まり集落郡の中のひとつだ。

スポット評価

終末度合い 11
訪問難易度 14
観光地要素 14
化石的価値 15
総合評価 54

当委員会では数度紹介している「三種町内陸エリア」の一因。そのストックはとどまるところを知らないが、今回の物件はその中でも更に奥まった場所にある。神馬沢集落方面の五城目町に通じる道路でもないため、車通りは更に少なくなる。稀に発生する掟破りの地元走りトラックには要注意。

特徴

旧琴丘町の内陸部中心エリアである上岩川小学校跡から県道37号線を南東に3kmほど進むと、ゆるやかな左カーブが見えてくる。そこから右に90度曲がって入り込むと今回の入口「勝平集落」にたどり着く。

上岩川勝平はそれなりに住宅が密集しており、農村公園らしきスペースもありよく整備されている。その中を南下して抜け出し、怪しい文言が見えたらいったん停車しよう。

三種町西又 入口
「 過疎農道 上岩川線 」※廃村後に整備されている

そうだこの先は警戒すべし。あらかじめ過疎を宣言してくれているだけありがたいといえよう。

お望みの通り、この先には人家など存在しない。待っているのは廃村のみなのだ。しかし農道というだけあって凸凹道ではない)。急な坂道はないので平和な旅であろう。

廃村 三種町西又 道中
やや不安になってくる道のり。(後述する「茨島」道中にて撮影)

地面が平らなだけあってそれなりに安心感はある。

しかし二ツ井町田代秋田市雄和萱ケ沢に行く途中のような謎の空白地帯が続き、その安心は不安へと昇華されるのである。

途中西又住民専用であろうカーブミラーがあり、その先で道が二手に分かれている。小さな作業小屋と橋がある直進の道を選んでしまいがちだが、ここは右手の登り坂を選択しよう。

直進すると1.8kmほどで廃村 茨島(ばらじま)にたどり着くのだが、こちらはツル状の草木が道路を塞ぐように生い茂り、田畑は耕作されているものの狭い道が続くため西又の後に訪問することをオススメしたい。

西又 道中2
中間地点で振り返る。休耕田の哀愁が背景によく似合う。

西又は電柱があるだけ、道路がやや広いだけ、滑落の危険性がないだけありがたい。廃村訪問は決して平和なものばかりではないからだ。自然の驚異に震え、害獣を警戒し、虫と草をかき分けながら他kらを見つけ出すのだから。

今回の訪問ルートはgoogleストリートビューにも載っているので、比較的平和な道中をお茶の間の皆さんの楽しむことができる。

廃村 三種町西又 廃屋

そして現れる巨大な陰。休耕田を左手に眺めながら、ほぼ真っすぐな道のりを1.5km南下して分岐を右折するとコイツの登場だ。

小川を乗り越えるコンクリート板の先には、生い茂った草木と共に作業小屋が見える。電線も通っているが、建物跡に電気はもうひかれていない。朽ち果てた赤トタンは周囲に散乱し、それすらも草木がのしかかり自然に還ろうとしていた。

西又 廃墟
写真中央が廃屋。2014年のストリートビューではかろうじて持ちこたえていたが、4年の時を経て完全に崩れてしまった。是非見比べてみてほしい。

自分たち夫婦はこの地で暮らしたいと思って家を新築しました。ところが、移転の話が出てきて全戸移転を勧められました。集落の人たちに迷惑をかけてはいけないと思い従いました。 ※「秋田・消えゆく集落180/佐藤晃之輔/2017」内「移転者ひとこと」より抜粋

崩れていた廃屋は、この方がかつて新築した邸宅だったのだろうか。

西又 最奥

最奥の作業小屋にはご老人が通っているらしく、訪問時には田んぼ周りの草刈りを行っていた(話しかけたが、作業中だったためか無視されてしまった)。道中が比較的整備されているためできることだろうが、冬の期間は閉ざされることだろう。

かつての12戸がどこにあったかすら、今では確認できない。(※参考URL
亡くなりゆく集落の足跡を見つめながら、稲穂は美しい紅涙を流すことだろう。