行平 廃村 廃墟

廃村 行平 ~死にかけの廃屋モニュメント~

廃村 行平 (ぎょうだい)

行平 廃村 入口

About 廃村 行平

秋田県由利本荘市矢島町立石行平にある廃村。2012年無人。最盛期5戸とされていて、そのすべてが朽ち果てながらもその姿を現代に残している。歴史的遺産として語り継がれるべき誇りの象徴であり、集落跡に残る展望はかけがいのない町の財産だ。

スポット評価

終末度合い 25
訪問難易度 24
観光地要素 21
化石的価値 23
総合評価 93

更に奥にあったとされる廃村「貝喰」はほぼ跡形も残っていないが、廃墟になってから比較的新しいこともあり一刻も早い保存が望まれる名スポットだ。廃村界に現れた期待の新人だが、その新人を知る者はやはり皆無なのだ。

廃村行平のさじなげB級ポイント

由利本荘市矢島町、一般的には由利高原鉄道の始発駅として知られている。1万国を有した生駒氏は、ゆるやかな坂道沿いに豊かな城下町を築き上げた。ほかにも龍源寺や天寿酒造でも知られていて、コンパクトながらインパクトのある街並みを楽しむことができる。

だがそんなコンテンツは我々の眼中にも入っていない。ここは高難度ダンジョン鳥海町の手前にありながら、廃村ファン必見の名スポットを数多く有する県屈指の名所なのだから。はいここまで貝喰と同じ。

貝喰 入口

矢島町新荘地区と東由利町田代地区を繋ぐ県道32号線、そこは消えゆく歴史への正門なのか。

トイレは愚か案内ひとつ全然出てこないので、スタート地点に至るまでで諦めないよう注意が必要だ。使い倒された道路にも、かつて歩いた猛者がいたのだろうか。急坂を通りながら思いを馳せる。水戸黄門でここを通る回が欲しい。いや、それは嘘だ。謝ろう。

由利本荘の隠れ玉東由利に行きたい気持ちはわかるが、ここはぐっと抑えて左折だ。

特攻野郎Aチームが裸足で引き返す獣道の数々。行政サービスという概念を根本から覆しかねない竜宮城では、玉手箱ひとつないのに怪しい水蒸気が立ち込める。亀さん、見守っていてください。旅の行く末を。

行平 廃村 道中

廃村「十二ヶ沢(じゅうにがさわ)」(2005年無人)を堪能してから、更に山林を抜けること10分弱。ようやく見える開けたスペースを(その景色に自信をなくすだろうが)左折し、全く先の見えない下り坂とヘアピンカーブを軽自動車ギリギリの幅でくぐり抜ける。

その先に現れるのが今回の目的地「GYOUDAI」だ。ジパンクへの上陸は無事成功となる。

行平 廃村 ようこそ

坂を下ってようやく最初に右手に見えますのが3軒の廃屋、虚構のジェットストリームアタックとなる。90年代の地図を除くと揃って金崎姓であり、表札もまだ残っている。

しかしながら3軒が表れたときの衝撃は筆説に尽くしがたい。狭く恐ろしいバミューダトライアングルに生き残るのは大量のアブ、そして大量の蜂たちだ。夏場はとても降りられない。(また来よう)

行平 廃村 蔵

電線に気づいて嬉しさを覚えたあなた、そうなればもう立派な変態だ。

逃げるは恥だが役に立つ。上小阿仁村八木沢集落や象潟町観音森集落かすんで見える難訪問、当時の住民はどれほどの努力をここに注ぎ込んだことだろう。いち若者にはとても想像ができない。

平成17年10月にNHKの「限界集落」の番組制作で訪ねた際は、(中略)夫婦2人で大きな茅ぶき屋根の住宅の雪囲いをしていた。(中略)「マスメディアは私たちのような1、2戸だけの小集落の苦労を取り上げて光を当ててほしい」と訴えられた。 ※「秋田 ・消えゆく集落180/佐藤晃之輔/2017」


どことは言えないが、限界集落の中には“一切の支援を受け入れず、何も残さず亡くなっていくことを望む集落”も存在する。集落・部落の考えは必ずしも一枚岩ではない。

それでも廃村 行平の住人は一生懸命だった。その証拠に、現在も2戸(坂手前の住宅と坂降りて一番奥の住宅)が耕作に通い続けている。生活に苦しくとも、集落の命をつなぎ留めることは可能だ。行政サービスの予算も膨らみ続ける昨今、すべての集落に光を注ぐことは難しい。それでも戦略的撤退により、「むらおさめ」することなく延命をはかることも可能なのだ。

行平 廃村 田んぼ

一説には4戸を下回ると集落機能が働かなくなり、廃村への道が確定するとされている。

これを見ている全行政関係者は、4戸以上ある限界集落へむらおさめ前に「記念碑・記念冊子」の提案、およびその予算を策定しなければならない。未来に向けた貯金を怠ることは、ホスピタリティとして失格だ。窓口接客での満足度が向上しないのとよく似ている。

廃屋 左

今この瞬間も、行平は他廃村と同じ道を歩み、いずれ誰にも知られない原生林へ戻りつつある。

隠された借金は過去への利息満点。過払い金は戻ってこないのだから、その存在を正しいお金で後世に伝えなければならない。当たるのは光か闇か、閻魔様気分になれる異様な場所だ。

行平 2022

【2023.01追記】
2022年8月再訪。坂の下にあった田んぼは耕作されず、荒地になっていた。
廃村たりとも姿は変わりゆく。1年の重みを感じる姿がそこにあった。