上小阿仁村中茂 ~ムラの希望と眠れる至宝~

上小阿仁村中茂(かみこあにむら なかも)

上小阿仁村中茂 全景

集落の秋は、暗く寂しかった。

About 上小阿仁村中茂

秋田県北秋田郡上小阿仁村沖田面(おきたおもて)上南沢および中茂にある集落。3戸ほどが静かに生活している奥まった行き止まり地帯で、道中は八木沢集落を彷彿とさせる山道が続く。しかしこちらに観光客が訪れる確率は限りなくゼロに近く、このページをもって我々の記憶に刻むこととする。

スポット評価

終末度合い17
訪問難易度17
観光地要素19
化石的価値22
総合評価75

道中の秘境旅的な雰囲気は、あの八木沢集落にもひけをとらない。ゆるやかなカーブを曲がって集落にたどり着くのだが、その手前で見える坂の上からの中茂はとても現代の世界とは思えない。我々が忘れかけている、日本らしい「集落」の原風景がそこにはある。

特徴

秋田市方面から 上小阿仁村 を訪れる場合、現代では五城目町から伸びる 県道285号線 を走るよりほかない(当然道中は廃村がある)。かつては大きく迂回する隧道や川の下を這う獣道があり、村の住民はそこを歩いて五城目朝市に出店したのだという。

狩猟民族「マタギ」の文化が根強く残っていたこの地域では、クマの毛皮や肉はもちろん、肝臓や睾丸は良薬として非常に高く売買されたと聞く。その精力こそがムラの生き血だったのだろうか…。

上小阿仁村中茂 入口

整備されすぎてて逆に怖い…入口から100mほどのところ。

中茂への入口はややわかりにくい。簡潔に言うと「五城目町との県境のトンネルを過ぎ、最初に現れた朦月トンネルを通ってすぐにあるバス停跡を右折」だ。

数年前までは見つけられず通り過ぎ、南沢の八木沢入口付近から折り返してくるのが中茂あるあるとして存在していた。しかし最近(2017年に入ったあたりで)中茂への右折を図る入口付近の森林が大幅に伐採され、それが目印となるため非常にわかりやすくなった。

それでも入口バス停付近は大型トラックの交通量が多い要所のため、写真撮影は難しい。冬には交通事故も多発する地帯のため、うっかり廃墟訪問への欲求から視界を取られないように心がけたい。

上小阿仁村中茂 なかも橋

出ました村の新名物!

入口からしばらくは(羽後町西馬音内~仙道間のような)山道が続く。そして中盤で現れるのがこの「ナカモブリッヂ」である。勝手に名付けた。

初訪問時(2015年冬)には橋の奥に深い霧が立ち込めていて、あまりの空気感に町まで引き返したことを今でも悔やんでいる。しかしそれほどまでに、この橋は突如現れる幻獣として行く手を阻むのだ。超狭いし。

上小阿仁村中茂 外観

橋を渡り、崖沿いのカーブを曲がれば目的はすぐそこ。

全長2kmほどの比較的短い山道だが、ようやく表れる中茂の風景はまさに輝きを放っている。

遠くに見える集落と、近くに見える田園のコントラストが素晴らしい。盆地状のわずかなスペースにまとまって住宅が集まるその様相は限界集落界のカリスマ。格が違うのだ。

上小阿仁村中茂 手前の廃墟

ようこそ 中茂集落へ!

しかし近づくと見えてくるのは、サムネと一番上に貼ったゴミたちの墓場、そしてこのわざとらしささえ感じる廃墟モニュメントだ。

よそからの訪問者を寄せ付けない人力道祖神とも思えるその佇まい。「決して集落内の文化を侵してはならない」というメッセージすら感じとってしまう。

上小阿仁村中茂 反対側

行き止まり付近から、通ってきた道の方を向いて撮影。

中茂の全景は上画像の通り。驚くべきことに、この写真を撮影した2年後に訪れた際、写真左側に新築の住宅が出来上がっていた。これには一緒に訪問したイギリス人学者も「Wow…」の一言であった。

ここはかつて、我々が通ってきた285号線が出来上がるまえの旧道だったのだという。トンネルができる前、山を越えて五城目に至る選択肢のひとつとして中茂は確かに存在していた。関係者からは「集落の先はかつてスキー場だった」という証言もあったが、証拠資料が見つけられず真相は不明である。

上小阿仁村中茂 分校

右側の標柱に注目! こういうの大事。マジ大事。全箇所建てろ。

そして、集落には「 沖田面小学校 中茂分校 」の建物が当時のまま残っている(1938年開校、1986年閉校。建物は1966年に建築された)。現在は地区会館として利用されている…らしい。

児童数は、昭和28年度の13名が最も多く、ほとんどの年度が10名に満たなかった。閉校時の昭和60年度は二名だった。 ※「秋田・消えた分校の記録/佐藤晃之輔/2001」より抜粋

上小阿仁村中茂 冬の風景

中茂の冬。左に少し見えるのが入口の廃墟である。

中学・高校と年を重ねるごとに、集落の子供たちはどうやって通学したのだろうか。特に車のない時代、あの道中を潜り抜けた少年少女の見た景色…早急な映画化が望まれる。

ちなみに中茂分校はしっかりと「閉校記念誌」を編纂しており、なんと道の駅に隣接した「上小阿仁村生涯学習センター」1階の図書スペースで自由に読むことができる。残念ながら村民以外の貸し出しは行っていないが、写真資料や思い出話が多数掲載されているため必読の一冊といえよう。

また、我々は好きものなので集落に何度も訪れている。上の冬画像にもあるように、集落には犬を連れて散歩するおじいさんがいるのだが、いまだに挨拶を返してくれない。悪気はないので、今度ご一緒にお茶でもどうですか? 僕らが奢ります。ドッグカフェ行きましょう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA