銭川温泉 (ぜにかわ)
About 銭川温泉
秋田県鹿角市八幡平トロコにある温泉跡地。オンドル式の湯治宿として知られ、2018年頃に宿泊営業を終了、2021年3月末をもって閉業した。建物も解体されてしまった。
スポット評価
終末度合い | 18 |
訪問難易度 | 19 |
観光地要素 | 14 |
化石的価値 | 08 |
総合評価 | 59 |
まさかの結末だった。八幡平屈指の秘湯と呼ばれたこの地が、跡形もなくなっているとは思わなかった。かつての記憶と重ね合わせると、もっと会っておきたかった名所である。
銭川温泉のさじなげB級ポイント
謎の馬事件が忘れられない中、我々は嫌な予感がしていた。久々にゆっくり巡ったその道中に数多くの廃墟が立ち並び、90年代の思い出は夢のまた夢に遠のいていたからだ。
そんな思い出の場所だった。幼心に見た八幡平はまさに桃源郷で、少年たちにとって笑顔の大人たちが最高の感情だと知る場所でいたはず。
上の画像は除雪センター(分校跡地)向かいでかつて営業していたトロコ温泉である。98年の時点で廃墟めいており、2022年現在の現状はご覧のあり様である。建物に近寄ることもできない。
そして子供の頃見た「銭川温泉」の看板がなくなっている。2012年のストリートビューでは2つあったはずが、入口が除雪センター脇だったかすら危うくなっていたのである。
トロコ除雪センターの脇から、大きく下っていく坂道がある。ガードレールひとつなく落ち葉に覆われた道中がその入口である。どこが道路かも判別しづらくなっているため、歩いて向かった。
紅葉がここまで怖く感じたのはいつぶりだろう。スリルはいつも我々は惑わせる。
不治の病が治ったという「瀬煮川の湯」
残念ながら、銭川温泉は亡骸になっていた。ほんの1年半前まではそこに笑顔があったはずなのに。出会いのカケラはどこに行ってしまったのだろうか。
親子3代で経営し、イベント企画も積極的に行っていたことが思い出される。1948年から73年にわたる歴史はここに閉じられ、何も記されていない状態にある。
それにしても、坂を下る手前で立ち入り禁止にしていただけないだろうか。
我々の微弱な体力とガッカリ度が大きく肩を落としていた。この汗を流すこともできないのに。
賑やかだった女将さんのSNSから堅い文章が投稿されたとき、そこに押し殺された感情がどれほど募っていたことだろうか。折しも閉業前には新型コロナが流行し、宿泊業への影響が強く出ている時期でもあった。
いま現地には、中仙町のサイトウなる人物の落書きが残るだけである。22年前の彼はこの地に感動し、その記憶を少しだけ伝えようとしてくれたのだろうか…。