岩野目駅 サムネ

岩野目駅 ~内陸線最強の勇姿に廃村を添えて~

岩野目駅(いわのめ)

岩野目駅 構内

About 岩野目駅

秋田県北秋田市阿仁幸屋渡字岩ノ目沢道下にある無人駅。秋田内陸線の中央部にあたり、まともな観光地や集落がないためか路線内では最も乗車数が少ないとされている。利用するのはよっぽどな鉄ヲタかわずかな住民のみだ。

スポット評価

終末度合い 16
訪問難易度 18
観光地要素 10
化石的価値 14
総合評価 58

数年前「君の名は。」で話題になった前田南駅とは違い、2台分ほど駐車スペースもあるので訪問時は安心。しかし角館からも鷹巣からも遠く、まともな阿仁合ルートから向かっても手前の笑内(おかしない)の知名度や、ひとつ先の阿仁合線元終着駅「比立内駅」に挟まれていて見逃してしまいがち。案内看板はなく、集落名の小さな看板の脇にあるあぜ道から向かうほかない県内屈指のマイナー駅なのだ。

特徴

赤字激しい秋田内陸縦貫鉄道は、北秋田市(旧鷹巣町・森吉町・阿仁町・西木村・角館町)を南北に貫く200km余りのローカル鉄道だ。昨今は秋田犬ブームやインスタブームと相まって外国人観光客が増加している。黒字化の日も近い…かもしれない。

そもそもが難産であったこの鉄道路線は、県道105号線(大内から鷹巣まで伸びている道路)が1970年代に整備されていて、車社会にがっつり先取りされた不遇な歴史を持つ。

そもそもが明治42(1909)年に森林資源の開発を資本に機運が高まった敷設運動だったが、関東大震災(1923年)や路線候補の乱立によって着工は昭和7年(1932年)と大幅に遅れた。北側の鷹巣~比立内間(17駅分)が昭和38年(1963年)で、国鉄阿仁合線から秋田内陸線の感覚となったのち、全線開通は平成元年(1989年)と大変に長い時間がかかってしまった。 ※参考文献:「各駅停車 全国歴史散歩 秋田編/秋田魁新報社/1978」

岩野目駅 看板

ローカル線の第2の命綱といえば学生定期利用だが、一部では「乗客が少なすぎて逆に心配だから息子は電車に乗せられない」と、車で送迎する家庭もあるという。悲しみの連鎖である。特に阿仁合以南の内陸線中央部は、当委員会で観察したところ一日1~2人の高校生が乗車するのみだった。

学校の統廃合により、道中にあった米内沢高校や合川高校は鷹巣にある北鷹高校へと合体。つまり学生は朝イチの電車で鷹巣や能代、あるいは大館へと向かうことになる。

内陸線 料金

厳しい通学状況の中、旧阿仁町の最南端にあたるのが比立内地区、そしてその手前にあるのが岩野目地区である。各種書籍を探しても岩野目駅の設立理由が出てこないが、能代市にある鶴形駅と同様請願タイプ(住民からの請願により設置されたもの)と推測される。

そこらへんは内陸線関係者のコメントお待ちしてます。フットパスツアーに期待。

岩野目駅 反対側
笑内方面

そして上の画像、よく見ると、駅ホームの反対側に至る枕木が映っているのがわかる。

「この先に何かあるのだろうか…」と思って調査した結果、岩野目駅の北側にはかつて集落が存在したことがわかった。当サイトのB級観光地ランキングにも明記しているが、「大平(おおだいら)」と「大和淵(おおわぶち)」という集落があったとされる。

※現在は画像右奥にかけられていたらしい橋が崩れており、比立内駅北側の農道からのみ訪問可能。しかし荒れ地となっていて往時の正確な場所は確認困難。

駅から眺めると南にしか目がいかないが、北にかつてあった集落に想いを馳せるのが当駅のもうひとつの楽しみ方といえよう。北側の姿が数十年先の岩野目とならないよう、静かに祈りたい。