阿仁町東裏簡2団地 サムネ

阿仁町東裏簡2団地 ~もうひとつの金鉱脈~

阿仁町東裏簡2団地(あにまちひがしうらかんにだんち)

阿仁町東裏簡2団地 全景
左の障子は…きっと猫のしわざだろう。そういうことにしておこう。

About 阿仁町東裏簡2団地

秋田県北秋田市阿仁水無字畑町東裏49-1にある集合住宅群。3戸建2棟、4戸建2棟、6戸建1棟からなる団地であり、周辺の住宅からは離れているものの、幹線道路沿いなのでなかなかに目立っている。当サイト上では便宜上、旧町名である阿仁を頭につけているが正式名称は「東裏簡2団地」。

スポット評価

終末度合い 21
訪問難易度 18
観光地要素 12
化石的価値 20
総合評価 71

旧阿仁町にある公営住宅の中でもひときわ存在感があり、山の中へここまでの団地が作られていることに鉱山時代の面影を感じてしまう。昨今は秋田内陸縦貫鉄道による観光施策を打ち出しているが、是非とも観光ルートに加えていただきたい名物件といえよう。

特徴

内陸線沿いは岩野目駅のような寂しい街並みだけではなく、開けた集落も大いに存在している。しかしその情景は平成でも新たな時代でもない。昭和のまま止まっているのだ。

今回の舞台は旧阿仁町の中心地である阿仁合に位置し、昭和11年に阿仁合駅が開通した。昔からここは金銀銅の鉱山開発で発展した町で、明治時代には「阿仁鉱山村」と名乗っていた。小さな山奥の集落ではあるものの、当時は1万人以上がひしめきあっていたという(現在は3,000人ほど)。

阿仁町東裏簡2団地 駅前
時代を感じさせる旧阿仁合駅舎(ホーム側から撮影)。2018年4月に黒一色へとリフォームされた。

駅前には異人館(ドイツ人鉱山技師用のレンガ造り住宅)や鉱山博物館もあり、歴史もしっかり感じることができるのだが…現代産業遺産はそこじゃ見られない。現地で確認しよう。

東裏簡2団地は東裏という地区に位置し、団地の向かいには旧町営野球場がある。子供たちの格好の遊び場なのだろう。団地のみんなで集まりやすい立地といえるが、訪問時には一人も見かけなかった。

阿仁町東裏簡2団地 向かい
ただ、スコアボードはあまり使われていない。

あらためて依頼品を見てみよう。

市の募集用物件紹介ページを見ると昭和51年建設だというが、他の同時期の物件よりも古く見えてしまう。二階建てや駅から遠いなどの理由から、あまり入居が芳しくなかったのだろうか。

それでも訪問時には全20戸のうち半数以上が入居しているように見えた。ちなみに説明用pdfにも明記されているが、テレビアンテナはついていないので個別に設置する必要がある。

阿仁町東裏簡2団地 その1
裏庭はきれいに整備されていた。愛着が深そう。

公営住宅や団地にとって、「アンテナの個別設置」というのは大きな魅力のひとつだ。

多数のアンテナが鉱夫のようにつるはしを掲げることで、建物のデザイン性は一気に没落する。見た目のインパクトでは棟数の多い八郎潟町営住宅に劣るものの、ナンセンスマシーンが時代を越えてゆく姿がここにはある。さながら公営住宅界の伊勢大神宮か。

阿仁町東裏簡2団地 裏側
垂れる導線、乱れる哀愁。向かう電波は赤袴。

もちろん観光客向けの物件ではないが、実は旧阿仁町にはこのような公営住宅がなんと6箇所もある。

若者の興味を削ぐ神社や仏閣ツアーよりも、早急に見学名目でのフットパスを切望したい。鉱山集落版テラスハウスが開催される日も、そう遠くはないかもしれない。我々は金鉱脈へ王手をかけている。

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