花の湯温泉 外観

花乃湯温泉 ~懐かしき昭和からの郷書~

美郷町 花乃湯温泉 (はなのゆ)

花の湯温泉 外観

About 美郷町 花乃湯温泉

秋田県仙北郡千畑町(現:美郷町)浪花田ノ沢150にある廃温泉。2000年代初頭に廃業したとみられるが、民間の湯治宿のため資料に乏しい。看板も残っていないため、事前情報無しで見つけるのは困難。

スポット評価

終末度合い17
訪問難易度14
観光地要素15
化石的価値20
総合評価66

手前の田んぼはよく耕作されているため、対比が目立つ。生活感のある住宅や集落にも近いことから、ここだけ昭和のまま時が止まっているかのようだ。
平成期になって千畑温泉サン・アールが建設されたことで、入れ替わるように亡くなったあまりにも惜しい名湯である。

花乃湯温泉のさじなげB級ポイント

汗を拭う日和の本格的な到来を控えた7月の始め、この時期が最も熱さを感じるため農作業や力仕事も一層疲れが溜まりがちだ。

そこで我々は虫の張り付いた軽に頭を下げ、温泉へと足を運ぶことにした。

千畑町

観光客が訪れることは少ないが、大仙市太田~六郷エリアは主要道の国道13号線から少し標高を上げた台地状になっている。見晴らしも抜群で、ドライブにはもってこいのグリーンスクエアだ。

美郷町千畑千屋からみずほの里ロードを数キロ南下し、サン・アールとの中間にあるラベンダー園近くにその入口はある。珍しくストリートビュー先生が訪問しているので、道路標示をするとわかりやすい。

道中

観光ポスターにでも出てきそうな不自然な立地に興味の源泉が台所清水、イカサママジシャンでは暴けないヒミツの昭和がまだそこにある。

冬に猟をしていた主人が雪の積っていない冷泉を見つけ、目印に植えた桜の木が春に花を咲かせたことが名前の由来とされている。
1948年開業で、昭和中期にかけて多くの湯治客・登山客で賑わったという。

花乃湯温泉 廃屋

しかし、現在残る建物は数十年は利用されていないようだ。
2000年代初頭の書籍を探しても連絡先ひとつ掲載されておらず、90年代前半からの公共温泉ブームに影を落としたものと推測できる。

近くには隠れキリシタン洞穴もあり、時代の流れに翻弄された遺跡のひとつとして我々の記憶だけにでも留めておきたい物件である。
看板(画像中央)に張り付けられた日本酒春霞を購入し、もう一度鍵を回した。

花乃湯温泉 倒壊

【追記】
2022年夏、再訪すると建物は無残にも倒壊していた。昨シーズンの豪雪が致命傷となったのか。
変わり果てた姿にただただ立ち尽くすしかなかった。自然の前にして人間はこれほどに無力か。