温泉旅館君乃家 (きみのや?)
About 温泉旅館君乃家
秋田県由利本荘市東鮎川沢口にある廃旅館。書籍資料が一切見当たらなく、詳細は謎に包まれている。30年以上前に廃業したと聞く。
スポット評価
終末度合 | 21 |
訪問難度 | 13 |
観光要素 | 16 |
化石価値 | 22 |
総合評価 | 72 |
あまりにも不自然な立地と物的証拠の少なさ、廃墟としてこの上ない浴場を駆り立てる。長い夜はいつか明けるはずだが、暗闇は光をも取り込む量子力学的速度で森に捕縛されていた。
温泉旅館君乃家のさじなげB級ポイント
1980年代に由利町(現由利本荘市)の源泉を調査した書籍というものがあり、それを除くと大正期やそれ以前に現存していた温泉に関する記述が多数見受けられる。
これは鳥海地区にも言えることだが、子吉川沿いにはかつての農民のために旅人向けではない温泉(公衆浴場のような立ち位置の施設)が数十か所存在していたという。
当然そのほとんどは廃業しているわけだが、現代の地図と見比べたところ唯一建物が残っている場所があることが判明した。カダーレの図書館で発情して怒られていたのは我々であり、それは詫びる。
早速取材班は木のおもちゃ館最寄りの鮎川駅に降り立った。未来はいつも目の前にあるとは限らない。イギリスの政治家マーガレット・サッチャーは「勝つためには、一度ならず戦わなければならないこともある」という言葉を残している。我々も時に日和ることがあるが、ときには情報が一切ない場所にも赴かなければならない。だから出不精たる鉄の意思を振り切って外出している。
駅近くには「高齢者活動促進施設ふれあい館鮎川」(コミセン)があり、これが鮎川小(おもちゃ館)旧校舎のあった場所である。廃墟へ行くついでに廃校知識も手に入るとは人生を二倍生きた気分だ。
近くの住民に話を聞くと、「温泉旅館かい?あまりいい思い出はないね」と一言だけ返してくれた。多くは語らないその理由はわからない。知るためには空を見上げる必要がありそうだ。
由利高原の里 天寿
温泉旅館君乃家は開業年不明だが、少なくとも1970年代の地図にはその姿が確認できる。前述した80年代後半の源泉調査書類にもその名称があるため、80年代後半の廃業ではないかと推測される。
当委員会としては白狐の湯や泉山荘以来の摩訶不思議物件だが、彼も掲載後に関係者からの証言が届いたので歴史は繋がるものと信じている。
予想に反して、建物は意外に大きかった。40人は宿泊できるだろうか。冠のとおり建物奥は温泉設備のようなスペースを確認できる。ただかなりの年月管理されていないようだ。
場所を考えると矢島と本荘の中間のため、子吉川を渡る手前の宿場と考えれば妥当なところか。
建物裏はひどく荒れており、隣は墓地である。お世辞にも良い立地とは言えない。
彼もまた崩れるのを待つだけなのだろうか。そして源泉はまだ湧いているのだろうか…。由利本荘市には整っていない歴史のパーツが多すぎる。町のデジタル化にも取り残されてる運命にある。